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第22回:レヴァークーゼナー・ジャズターゲ2010〜ギター・スペシャル

 2010年11月6日から8日間に渡って行われたドイツ・レヴァークーセンのジャズ祭、レヴァークーゼナー・ジャズターゲ。今年は、ギター・ファンが泣いて喜びそうなスペシャル・プログラムが3日間組み込まれていた。

Leverkusener Jazztage 2010 - Masters of Guitar programs-
初日(11月6日) Masters of Acoustic Guitar:
パコ・デルシア(g)/アル・ディメオラ(g)/ジョー・ロビンソン(g,vo)
3日目(11月8日) Masters of Blues Guitar:
ジョニー・ウインター(g,vo)/エリック・サルディナス(g,vo)
4日目(11月9日) Masters of Electric Guitar:
ジョン・スコフィールド(g)/アラン・ホールズワース(g)/スティーヴ・ルカサー(g,vo)
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パコ・デルシアとアル・ディメオラの“仲直り共演”
 人気ギタリストのオンパレード! アコースティック、エレクトリック、ブルースの3つのギター界で人気と実力を誇るギター・マンたちが個性的なライヴを観せた中で、最も注目され話題になったのは、初日に行われたパコ・デルシアとアル・ディメオラの“仲直り共演”である。この日まで約14年間ひと言も口をきかない絶縁状態にあった2人は、まるでお互いにそのギャップを埋めるように、楽しそうに笑顔を見せながらデュオで1曲プレイした。それは、熱心なファンなら何をやったのかすぐに察しがつくかも知れないが、この2人がジョン・マクラフリン(g)と組んだスーパー・ギター・トリオの名盤アルバム『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ~スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』(81年)に収録されていた名曲だった。この2人の共演に関する詳しいことは、上記したギター・マンたち(サルディナスをのぞく7人)のライヴの様子と各人の使用機材のことなども含めて、12月14日発売のジャズライフ2011年1月号でレポートしている。ギター好きの方は、ぜひジャズライフ1月号をチェックしていただきたい。

Masters of Acoustic Guitar
 さて、ここからはジャズ祭に出演したギタリストを中心に、その出演順に写真で紹介してみたい。
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 アコースティック・ギターにサム・ピックを使ったフィンガー・スタイルで素晴らしいプレイを観せた、オーストラリア出身のジョー・ロビンソン。ソロ・デビュー作『バードシード』をリリースしたのは、いまから4年前、なんと15歳の時!
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 こちらは、アル・ディメオラのアコースティック・プロジェクト、ニュー・ワールド・シンフォニア。
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 そして、情熱的なフラメンコダンスもフィーチャーして、目と耳で楽しませてくれたパコ・デルシアのバンド。パコ・デルシアとアル・ディメオラの“仲直り共演”は、このライヴのアンコールで行われた。

Masters of Blues Guitar
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 ジョニー・ウィンターのステージ。2曲プレイしたアンコールの1曲目には、この日ジョニーのサポート・アクトを務めたエリック・サルディナスが、ドブロ・ギターにボトルネックで飛び入りした。ジョニーは、1年半前にインタヴューした時(『永遠のブルースマン~ジョニー・ウィンター』/文末のリンク集参照)よりも頬の辺りがちょっとふっくらとした感じで体調も良さそうだった。

Masters of Electric Guitar
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 ドラムのビル・スチュワートとベースのスティーヴ・スワロウとのトリオで出演して、もっともジャズ的(?)なプレイを観せたジョン・スコフィールド。
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 プロ・アマを問わず、世界中のギタリストが熱い視線を向けるアラン・ホールズワース。ホールズワースのギターのプレイ・スタイルやサウンド、音楽性は、まさにワン・アンド・オンリーだ。
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 スティーヴ・ルカサーのプレイは、ポピュラー・ミュージックが好きな人なら、彼の最近のソロ活動やTOTO以外にも必ずどこかで無意識のうちに聴いている。70年代からスタジオ・ミュージシャンとして超売れっ子だったことを、どこかのサイトで見たインタヴュー・ビデオで本人が語っていた。それによると、TOTO時代にマイルス・デイヴィスから「俺のレコーディングに参加しろ」と言われたが、忙しすぎたのでマイルスのその誘いを丁重に断ったそうだ。もったいない。
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 ルカサーの最新アルバム『オールズ・ウエル・ザット・エンズ・ウエル』に収録されている新曲を中心に、ロック・テイストあふれるステージを展開したルカサー・バンドの紅一点。演奏はもちろんのこと、メンバーの中でただひとり踊りながらプレイするそのルックスもなかなかクールだった女性ベース、レネ・ジョーンズ。

*** つづいてここからギター・プログラム以外のライヴ ***

実力派ドラマー3人が自己のバンドでコンサートを行ったDrum Word
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 ジャズ祭5日目に行われたドラム・ワールドのトップバッターは、サックスとピアノとベースを加えたクアルテットで出演したマヌ・カッチェ。素晴らしい演奏を観せたマヌは、オーディエンスの盛大な拍手を受けながら最後にこう言った。「申し訳ないけど、僕がこれ以上ステージを占領しているわけにはいかない。このあとまだまだ素晴らしいドラマーが登場するんだ。このステージに立つことができて光栄だよ」。
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 2番手はオマー・ハキム。サックスのボブ・フランセスキーニやベースのジェリー・ブルックスなど、気心の知れた友人たちにサポートされて、洗練されたドラミングと素晴らしいオリジナル楽曲の数々をのびのびと披露した。
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 そして、この日のトリは、“元祖ドラムの手数王”ビリー・コブハム
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 コブハムは非常にひょうきんな人だ。演奏中、筆者のカメラに向かっておどけた表情を観せてくれた。
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 4本スティックの妙技も観せたドラム・マスター。
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 スティール・ドラムも加えたビリー・コブハム・バンドのライヴ。アンコールでプレイされた「ストレイタス」は、ぐっとテンポを落としてはじまったあと、コブハムのスネア・ロールから一気にスピードアップした。途中で各人のソロが展開して行くのはいつも通りだったが、エスニックなワールド・ミュージック風味を取り入れて新しいアレンジが施されていたのが新鮮だった。ドラムが主役のこの日は、ちょっと年齢層が高めの男性客が数多く詰めかけていた。

Voices of Africa
 6日目は、アフリカ中央部コンゴ民主共和国出身のシンガー、ロクア・カンザが自身の歌とアコースティック・ギターの美しいサウンドで会場を包み込んだあと、西アフリカ・マリ出身の人気シンガー、サリフ・ケイタが登場。
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 サリフ・ケイタのバンドは、コンガやジャンベ、カラバシ(大きなヒョウタンを半分に割ったものを伏せてそれを手で叩く)などの打楽器奏者3人と、ギタリスト2人、ベース、ゴニ(コラに似た弦楽器)、それに女性シンガー2人という総勢10人の大所帯で、ゴニ奏者のアクロバチックなプレイやジャンベ奏者の叩きまくりなどのソロ・パフォーマンスも織り交ぜながら、ダンサブルなステージを展開した。
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 西アフリカのビートで踊りまくる会場に向かって「君と君、それからあなたも」と、オーディエンスを指差して……
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 20人ぐらいの観客を舞台に引っ張り上げて踊らせる。以前、別の記事『ジャズの根源、ディープ・ウエスト・アフリカ~音楽編』(リンク集参照)にも書いたが、アフリカでは、ミュージシャンがコンサートで演奏している時、そのステージに聴衆が上がり込んで一緒に踊りだすのは当たり前のことなのだ。

2010年のジャズターゲのメイン会場フォーラム
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 ホール内では出演アーティストたちのCDやポスター、ツアーTシャツ、それにジャズ祭のTシャツ(今年も主催者がジャズライフ読者へのプレゼントに提供してくれた!)などのグッズも売られている。
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 ドリンク売り場。ケルンの地ビール(ビン入りと生の両方がある)やソフト・ドリンク、ワイン、ゼクト(スパークリングワイン)、ウォッカなどがプライス・リストに記されている。価格は、ビールやコーラなどが1WM、ワインは2WM……???
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 CDやTシャツなどのグッズは現金で販売されているが、ドリンクやスナックを買いたい人は、まずはこのようにWM(Wertmarke/代用貨幣)を手に入れてから売り場へと向かう。1WMは2.50ユーロだった。
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ブラボー!

リンク集:
●ジャズライフ (jazzlife.co.jp)
●レヴァークーゼナー・ジャズターゲ(Leverkusener Jazztage 2010)
●ロックパラスト・ギター・スペシャル (2008年のジャズターゲ/本サイト内の記事)
●ジャズの根源、ディープ・ウエスト・アフリカ~音楽編 (西アフリカ・ブルキナファソ旅行記/本サイト内の記事)
●永遠のブルースマン~ジョニー・ウィンター (2010年5月に行ったジョニー・ウィンターへのインタヴュー/本サイト内の記事)

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by reijimaruyama | 2010-12-17 14:08 | Jazz Festival