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第15回:ロックパラスト・ギター・スペシャル

 ドイツ中西部のライン川沿いにある小都市レヴァークーセンは、ゴシック式の大聖堂(Dom)で有名な文化都市ケルンから北に車で15分たらず、日本人駐在員の数が多いことでも知られる商業都市デュッセルドルフからは南へ車で20分ほどのところにある。この街で毎年11月に開催されるLeverkusener Jazztage(レヴァークーゼナー・ジャズターゲ)は、老練のベルリン・ジャズや北ドイツのジャズ・バルティカなどと共に、ドイツ国内では“指折りのジャズ祭”のひとつとして音楽ファンの間で定着しているジャズ・フェスティヴァルである。
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Leverkusener Jazztage 2008
November 01 - 09 2008 Leverkusen, Germany


 第29回目を迎えた2008年のJazztageは、11月1日から9日までレヴァークーセン市内にあるコンサート・ホールやクラブなど、合計7つの場所で48アーティストのライヴが行われた。中でもメイン会場となったホール“フォーラム”で組まれていたプログラムが注目の的で、目玉は、何といっても6日目(11月6日)に出演したチック・コリア(p,kb)とジョン・マクラフリン(g)の双頭ユニット“ファイヴ・ピース・バンド”だった。バンドのメンバーは他に、ケニー・ギャレット(as)、クリスチャン・マクブライド(b)、ヴィニー・カリウタ(ds)という強者ミュージシャンで固められている。この顔ぶれを見ただけで、そのステージがどのようなものであったか、フュージョン・ファンならすぐに察しはつくだろう。このライヴの様子とレヴァークーセン・ジャズ祭リポートは、ジャズライフの2009年1月号で詳しく報告した。また、“ファイヴ・ピース・バンド”は、欧州各国22都市を回ったその2008年ヨーロッパ・ツアーの模様を2枚組のライヴ・アルバムにして翌2009年2月に発表し、ジャズライフ3月号ではそのアルバムをフィーチャーした特集記事が組まれた(これらの記事の一部を見る)。さらにバンドは、ライヴ盤のリリースに合わせて同2月に来日。ブルーノート東京で行われたそのライヴでは、ヴィニー・カリウタに代わってブライアン・ブレイドがドラムを叩いている。
 さて、ここでは2008年のジャズ祭3日目(ロックパラスト・ギター・スペシャル)に出演したドミニク・ミラー、エイドリアン・ブリュー、リヴィング・カラーのライヴを、ジャズライフの誌面に収めることができなかった写真と共に紹介してみたい。

“Rockpalast Guitar Special”とタイトルがつけられた3日目のプログラム
トップ・バッターはスティングのギタリスト

 この日は、ギター・ファン向けの3本立てライヴが行われた。まずは、スティングの“右腕ギタリスト”として、これまで20年近くに渡ってアルバムとライヴの両方からスティングのサウンドを支えてきたドミニク・ミラー(g)が自己のグループで登場。ドミニクは、ニコラス・フィースマン(b,g)とラニ・クリヤ(perc)、それにレベル44のメンバーでもあるマイク・リンドアップ(p)の4人編成で、ドミニクのソロ1作目『ファースト・タッチ』(96年)の収録曲を中心に、これまでに4枚出している自身のアルバムの曲や、スティングがドミニクの曲にフランス語の歌詞を付けて歌った「悔いなき美女」(スティングの96年のアルバム『マーキュリー・フォーリング』に収録した曲)のインスト・ヴァージョンなどを披露。ナイロン弦のアコースティック・ギターによる美しいサウンドと楽曲でオーディエンスを魅了した。
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Dominic Miller

Adrian Belew Power Trio
 2番手は、エイドリアン・ブリュー(g,vo)・パワー・トリオ。エイドリアン・ブリューは、70年代後半にロック界の大奇才フランク・ザッパに見いだされて世界デビューした後、デヴィッド・ボウイ(vo)のバンドやトーキング・ヘッズ、トム・トム・クラブ、ベアーズなどで活動。82年にキング・クリムゾンに参加し、現在に至るまでクリムゾンの中心人物ロバート・フリップ(g)に次ぐ重要メンバーとして活躍。1982年にソロ1作目『ローン・ライノウ』を発表して以来、これまで多岐にわたる音楽スタイルによるリーダー・アルバムも数多くリリースしている。
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Adrian Belew
 そのライヴは、バンド名が示す通りにエネルギッシュなステージ。しょっぱなからパワー全開の演奏を観せるブリュー。昔から“象の声”などのカラフルかつ奇妙なサウンドをギターで生み出すのを得意としていたが、このライヴでもループ・マシンやディレイ、エコー、フランジャーなど、いくつものエフェクトを駆使した得意技をたっぷりと披露。それを支えるバックのリズム隊2人は若い姉弟で、ベースの姉(ジュリー・スリック)は現在22歳、ドラムの弟(エリック・スリック)は21歳。ジュリーは、終始クールな表情で時々粋なアクションも観せながらキッチリとボトムを支え、エリックは、ブリューも思わず笑みをこぼすほど“イケイケ感”抜群の元気なドラミングで、主役ブリューのギター・プレイと共にこのトリオの見どころだった。

はだしのジュリー
 このライヴ終了後に行ったエイドリアン・ブリューのインタヴューもジャズライフ1月号に掲載されているが、当初その原稿の中に入れようと考えていながら、ひとつだけ書かなかったことがある。それは、ベースのジュリー嬢がステージの上で“はだしでプレイしていた”こと。その理由を終演後の彼女に聞いた。「2年前に行ったエイドリアンとの初ライヴで、かかとのついた靴を履いていたらコンサートの途中で片方のヒールが壊れて飛んじゃった(笑)。それでしかたなくはだしになってステージを続けたんだけど、それを見たエイドリアンがとても気に入ったの。だからそれ以来ステージではいつもはだしなのよ」。
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Julie Slick
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Eric Slick

Living Colour
 この日のラストは、80年代後半のメタル全盛時代に“黒人ヘビメタ・バンド”として注目されて人気を博した4人組、リヴィング・カラー。バンドの中心人物、ギタリストのヴァーノン・リードは、ロナルド・シャノン・ジャクソン(ds)のコンボへの参加やビル・フリゼール(g)と制作したアヴァンギャルドなアルバム『Smash & Scatteration』(84年)などが証明する通り、ジャズ畑でも立派に通用する実力の持ち主。リードは、ローランドVG-99(ギター・モデリング・システム)やコンピュータも駆使したぶ厚いギター・サウンドによるスピード・プレイを観せながら、ペダル・エフェクターを多用するベースのダグ・ウィンビッシュと共に、まさに生きた色彩のヘヴィなサウンドを作り出す。そして、そこにウィル・カルホーンのタイトなドラム・グルーヴが絡み、コーレイ・グローヴァーがシャウト。迫力と緊張感に満ちたスリル満点の演奏を展開した。今回のツアー中に書いたという新曲も披露したこの日のステージでは、結成から20年以上の時を経てもバンド内の創作力が落ちていないことを実証して見せてくれた。
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Doug Wimbish(b) & Corey Glover(vo)
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Will Calhoun(ds)
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Vernon Reid(g)
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 最後に、会場内にあったケルシュ(ビール)売り場。ドイツには地域ごとに実に数多くの種類のビールが存在する。その中でも全国的に人気のあるピルスは、見た目が黄金色に透き通り味もさっぱりとキレの良い苦みで日本のビールに似た感じ。ケルシュ(地元の人は“ケルチ”と発音する。少なくとも筆者の耳にはそう聞こえる)は、見た目はピルスに似ているが、ピルスよりもさらにのどごしが良くて飲みやすいケルンの地ビール。酒が苦手の筆者でも0.2ℓの細長いグラスで2杯ぐらいはイケる。

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by ReijiMaruyama | 2008-12-21 19:00 | Jazz Festival