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第11回:背高ノッポのベーシスト

 さすがに21世紀を生きる若者らしくズボンのベルトの位置が70年代と違ってかなり下の方ではあるが、これで髪の毛をのばしてフレットレスのフェンダー・ジャズベースを持ったらお父さんにそっくり。今回は第5回:ジョナス・エルボーグの記事の最後の方でちょっと触れた“背高ノッポのベーシスト”である。さて、彼はいったい誰だろう?
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Who is this bass player?

背高ノッポのベーシスト、フェリックス・パストリアスへのインタヴュー
 鋭いベース・ファンならすでに察しはついていたかもしれない。彼の名はフェリックス・パストリアス(Felix Pastorius)。1976年にアルフォンソ・ジョンソン(b)の後任としてウエザー・リポートに参加し、自らの手でフレットレスに改造したフェンダー・ジャズベースを使った独特のトーンとそれまで誰も成し得なかった高度な演奏技術でエレクトリック・ベース界に大革命を起こした天才ベーシスト、ジャコ・パストリアス(1951年12月1日生~1987年9月21日没)の息子である。

 1982年の夏、ウエザー・リポートを脱退した直後にジャコは、総勢21人からなる自己のバンド“ワード・オブ・マウス・ビッグバンド(ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンドとも呼ばれる)”を引き連れて来日した。その時のコンサートは録音されて『TWINS Ⅰ&Ⅱ』という2枚組のアルバムになっているが、このタイトル(TWINS = “双子”の意)は、来日直前(6月9日)に生まれたジャコの双子の息子、ジュリアスとフェリックスの誕生を記念してつけられたものだ。

 天才ジャコのDNAを受け継ぐジャコの子どもは、この世に4人存在する。ジャコの最初の妻トレイシーとの間に生まれたメリーとジョン(3つ違いの姉弟)は、ジャコのソロ2作目『ワード・オブ・マウス』(81年)に収録された曲「ジョンとメリー」に幼いヴォーカルで参加した。メリーは、現在シンガーとして音楽活動を行っており、ジョンもメリーのアルバムにドラムで参加しているらしい。
 2番目の妻イングリッドとの間に生まれた双子は、現在マイアミで way of the groove というバンドを組んで活動している。兄のジュリアスがドラム、弟のフェリックスがベースだ。ちなみに、ジャコはベースに転向する前はドラマーで、ジャコの父親ジャック・パストリアスも元ドラマー、そしてジャコの甥デイヴィッド・パストリアスはベーシストである。パストリアス家にはリズム・セクションの血が流れているみたいだ。生前のジャコの口癖に「レディース&リズム・セクション・ファースト」というのがあったそうだ。「音楽の土台を支えるドラマーやベーシストを女性と同じくらい大切に扱おう」という意味のジャコ流の洒落たフレーズだ。
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Jonas Hellborg & Felix Pastorius
フランクフルトのメッセ会場でジョナス(左)とツー・ショット。フェリックスは父ジャコも大好きだったジミ・ヘンドリックスのTシャツを着ている。

 さて、2007年3月29日にフランクフルト・ムジークメッセの会場でジョナス・エルボーグ(b)と共にデモ演奏を行っていたフェリックスにインタヴューすることができたのでここで紹介したい。“世界最高のベース・プレイヤー(The World's Greatest Bass Player)”と自ら称し、自他ともにその天才ぶりを認めた父ジャコと同じ楽器を演奏するのはどんな気持ちだろう。フェリックスに質問をぶつけてみた。


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父のベース・ソロを細かく1音1音コピーした曲もある
——お父さんがメンバーだった時のウエザー・リポートのコンサートを東京で観たんです。1980年、あなたが生まれる2年前です。
フェリックス・パストリアス(以下FP):そのライヴでは「スリー・ヴューズ・オブ・ア・シークレット」を演奏したのかな?
——バンドは最初からものすごい勢いでした。1曲目の「ブラック・マーケット」がはじまると、お父さんはベースの1弦3フレットのあたりを使ってあのベース・ラインを強烈に弾きはじめたのです。それを見て「ベースってあんなポジションでバッキングしてもいいのか!?」と目を丸くしてしまいました。その後はもう圧倒されっぱなしで、いまとなっては、お父さんが1曲ドラムを叩いたこととベースを弾く時の姿があまりにも格好良かったこと、それぐらいしか記憶にないです。
FP:(笑)なるほどね。
——「スリー・ヴューズ~」は、お父さんがあなたのお母さんに捧げて書いた曲で、原題はお母さんの名前「イングリッド」だったそうですね。
FP:うん、僕も母からそう聞いている。
——素晴らしい曲ですね。お父さんはベース奏者としてだけでなく作曲者としても優れていました。
FP:僕もそのことを言いたい。父の驚異的なベース・プレイは、父が残した素晴らしい音楽の一部分だと思う。ベースの奏法に限って言えば、僕はもっとロック的なレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーとかプライマスのレス・クレイプルなどのプレイを聴いているよ。
——その2人はスラップ奏法が得意ですよね。
FP:だから僕もスラップをたくさんやる。父はあまりやらなかったよね(笑)。
——お父さんの演奏を真似してみた事はありますか。
FP:もちろんあるよ。すべてじゃないけど、父のベース・ソロを細かく1音1音コピーした曲もある。僕にはそれを避けて通る事は出来なかった。

ベース奏者は音楽をコントロールする権限を与えられている
——偉大なミュージシャンだったお父さんと同じ楽器をプレイするというのはどんな気持ちですか。
FP:人々が“ジャコの息子”という見方で僕に接してくる事はあまり気にならない。でも、僕のプレイに“ジャコ”を期待する人が多いのも事実だ。そういう人たちの気持ちはわからないでもないけど、これは正直言ってつらいよ。僕は音楽が好きでベースを弾くのが楽しいだけ。僕の演奏を観た人が不満を感じたとしても、申し訳ないけど僕にはどうすることも出来ない。
——ベースの魅力って何でしょう?
FP:ベース奏者は音楽をコントロールする権限を与えられていると思う。他の楽器がプレイしやすいように音楽を支えるのがベースの役目であり、それが魅力なんじゃないかな。
——音楽の“鍵”をベースが握っている、と?
FP:その通り。ベースの動き方次第で曲のキー(調)やリズムなどすべてが変わってくるからね。
——あなたはどのようなミュージシャンでありたいと思っていますか。ベーシスト、トータル・ミュージシャン、それともコンポーザー? 
FP:本音を言うと自分でもまだわからない。他のミュージシャンと演奏するのは楽しいし、そこから新しい感覚を得ることもできる。作曲もフィーリングを重視しながらやっているよ。僕の兄(ジュリアス)は素晴らしいドラマーで、僕らはギターとサックスを加えたバンドを組んでいるんだ。
——そのバンドではどんな曲を演奏するんですか?
FP:ハービー・ハンコック(p,kb)やウエザー・リポート、それに父の曲もたくさんプレイする。でも、すべて独自のアレンジでやっているから、僕らの曲だと勘違いする人も多い(笑)。
——先ほどのデモ演奏でワーウィックの6弦ベースを弾いてましたが、あれがあなたのメイン・ベースですか。
FP:いや、あれは借り物。僕のメインはこの5弦ベースだ(と言って見せてくれたのが下の写真の黒いベース)。フレットはついている。5弦ベースというとローB(低音弦)が張られているものが多いけど、僕はハイC(高音弦)を加えた。これでテナー・サックスの音域が出せるんだ。高い音を使ってコードを弾いたりもする。でも、ソロを弾く時にあまり高音でやりすぎないように注意しているよ(笑)。
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“Lauricella Custom Guitars”というロゴがヘッドに入ったフェリックスの5弦ベースは、ジャズベースを基にして製作されたカスタム・メイド。フレットレス・ベースのように丸みを帯びたサウンドが狙いか、黒いフラットワウンド弦が張られていた。

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by ReijiMaruyama | 2008-06-20 20:48 | Musician / Interview