第5回:ジョナス・エルボーグ
2008年 03月 27日
ジミヘンやクリーム等のロックやブルースの影響を受けて12才頃からベースを弾きはじめた後、ジョン・マクラフリン(g)率いるマハヴィシュヌ・オーケストラ(以下MO)のデビュー・アルバム『内に秘めた炎』(原題“THE INNER MOUNTING FLAME”/71年)を聴いてジャズロックに目覚めたエルボーグ。約10年後の1983年、それまで自己のレーベルを立ち上げソロ・アルバムを制作するなど地道な活動を続けていたそのエルボーグに今度はマクラフリンが注目した。
マクラフリンは、ビリー・コブハム(ds)とのトリオにエルボーグを招き入れると、さらにメンバー/楽器編成を替えて再結成したMOへの参加も要請。これによって若きスウェーデン出身のベーシストの名は世界中のジャズ・ファンに知れ渡った。84年にモントルー・ジャズフェスティバルに出演したMOのライヴDVD(74年に行ったライヴも収録)が最近になって発売されたが、その中で当時のエルボーグの熱演を観ることができる。
俗にいう“練習”は「いっさいやらない」というジョナス・エルボーグ
Text & Photo by Reiji Maruyama
1996年のフランクフルト(ドイツ)・ムジークメッセ会場でエルボーグが語った
「僕に言わせれば、本当の意味でのハイ・クオリティ・アンプというものは未だに発表されていない。妥協したくないから今はベース・アンプを使用しない」。つまりアンプなしでDI(ダイレクト・ボックス)を通して直接ミキサーにつなぐという事。当時のエルボーグは、自身のアイデアをもとにしてステータスに製作を依頼したソリッド・ボディのベースを使用していた。「エフェクターも使っていない。あくまでも音は自分の指で作り出すものだと考えているからね。その方法を言葉にするのは難しいが、強いて言えば自分の頭の中で鳴っている音のイメージをハッキリと把握して、指と耳のコネクションを密にするということ。テクニック的な事はあまり考えずに、実際に出てくるサウンドをよく聞きながら、イメージする音とのギャップを埋めていくんだ」。
ベースのプレイに必要な筋肉が衰えないようにするためのシンプルなスケールなどを弾くトレーニングと、音楽の内容を考えながら“曲”を弾くということ以外は、いわゆる“練習”はいっさいやらないと言うエルボーグ。あなたのように技術的に高いレベルに達した人ならそうかもしれないがと突っ込むと、「いや、これはどんなレベルの人にも言えることで、出来れば早い時期からそうすべきだ。いわゆる“練習”というものは、プラスティックで作った食べ物みたいなもので、料理することも実際に食べることも出来ない。音楽理論も同じだ。僕は本やレコードなどを参考にして独学で理論を学んだけれど、今では音楽は言語みたいなものだと考えている。いろんな国の言葉の文法をどれだけ勉強しても、実際に人との会話が出来なければあまり意味がない。それよりも世界中を旅して回りながらいろんな人と出会ったりする方がためになる。音楽もそれと同じ。練習やセオリーだけでは成り立たないんだよ」。
時は流れて2007年のフランクフルト・メッセ
ドイツのベース・メーカー、ワーウィックのブースでデモ演奏するエルボーグを見つけた。先の写真がその一場面である。同社が製作した自身のシグネィチャー・ベース(ホロウ・ボディ仕様)とアンプを使うエルボーグ(左)と共に演奏していたのは、はだしのインド人バイオリン奏者ともう一人……。
あれ? あの背高ノッポのベーシストは誰? この雰囲気、それに左手の開き具合など、どこかで見たことあるような。ベース好きの人ならその風貌から何となく察しがつくかもしれないが、この青年については別の機会で。
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by ReijiMaruyama
| 2008-03-27 13:06
| Musician